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『空を超えて、ラララ星の彼方ゆくぞアトムジェットの限り・・・』の歌詞でもおなじみの鉄腕アトムは、1951年に連載が始まりました。21世紀の未来を舞台に、心を持った少年ロボット・アトムが活躍するストーリーとして人気を博しました。
戦後6年しか経過していない時代ですが、夢や希望、科学に対する憧れが描かれ、子供から大人まで誰もが知る未来を象徴するキャラクターとして登場してきたわけです。

さて、アトムというロボットが登場してから60年以上経過し、今は当に21世紀です。鉄腕アトムは流石に実現できていませんが、ソニーが作った「アイボ」やホンダが生みだした「アシモ」などは登場しています。少し趣は異なりますが、「ルンバ」なるお掃除ロボットも身近な存在として私たちの暮らしの中に入り込んでいます。

一方、21世紀という時代は、夢や希望、科学に対する憧れなどを継続できているのでしょうか。わが国でいえば東日本大震災による生命・財産などの喪失をはじめ、政治への不信感、雇用不安、グローバル化に対応できないガラパゴス化など、アトムが描いていた世界とは少し違う様相を呈しているのも事実です。

しかし、携帯電話やインターネットなどの技術は私たちの暮らしの中にすっかり溶け込んでいますし、新生児死亡率も格段に
減少しています。より便利に・快適にそして安全な暮らしを手に入れていることも事実です。

モノとして見えるロボットや携帯電話が私たちの暮らしを豊かにしてくれていることに間違いは無さそうです。しかし、時代や気持ちといった目に見えないものが私たちの心を満たしてくれているかどうかは定かではありません。
このギャップが不確実性を生む要因のひとつなのではないかと私は考えています。ここ最近、不確実性という言葉が様々な分野で使われています。特に市場経済を舞台とした企業経営の場では、その使用頻度は高いのではないでしょうか。

高度経済成長を遂げ、バブルを経験した20世紀後半までは、目に見えている商品やサービスといったものと目には見えないですが、夢や希望や憧れといった心の持ち様がマッチしていたのではないでしょうか。マッチしていた状態を確実性があった時代と呼び、マッチしなくなった現在が不確実性の高い時代と呼んでいるのではないかと、推察します。

目に見えるものとしての商品やサービスが、未だ足りない、満足できないという心の持ち様の時代には、顕在化したニーズに対応することが確実性に繋がります。しかし、既に足りている、満足しているという心の持ち様の時代には、顕在化したニーズそのものが見つけにくいわけですから、不確実性が高くなります。

近年は顧客第一、顧客ニーズを満たす、という言葉が巷に溢れています。本当にそうでしょうか?顧客第一と顧客ニーズを満たすことは別の概念だと思います。企業にとって顧客を創造することが企業の目的である、とピーター・ドラッカー氏は言っています。確かに的を得た指摘です。顧客を創造する中に顧客ニーズを満たすことは含まれますが、顧客ニーズを満たすことが顧客を創造することにはなりません。
まして、既に足りている、満足している、という心の持ち様の時代には、顕在化したニーズそのものが無いという事態は想定外ではないのです。

21世紀はイノベーションが重要視されます。イノベーションは、顕在化した顧客ニーズを満たす場合もあるでしょうが、本意は、夢や希望や憧れといった目に見えない心の持ち様と目に見えるものとしての商品やサービスをマッチングさせる手段だと思います。また、ドラッカー氏は、顧客創造の手段としてイノベーションとともに、マーケティングを上げています。

顧客ニーズを調査・分析しカタチとして商品やサービスへと結びつけるのがマーケティングの基本だとすれば、マーケティングのスタートとなる顧客ニーズがなくなったわけではありません。只、顧客ニーズを追いかけても夢や希望や憧れといった目に見えない心の持ち様を高揚させ売り上げや利益に結び付ける確実性をアップさせる事が難しくなったということです。
マーケットインやカスタマーインといった事が否定されるわけではありません。只、イノベーションはマーケットインやカスタマーインの線上では無く、非線形上にあるのではないか、ということです。

少し別の角度から見ると、ヘンリー・ミンツバーグ氏は、戦略を策定する行為は2本足で進んでいくと述べています。すなわち、プランニングの足と創発の足です。そして、プランニングは学習を排除するが、創発は統制を排除し、一方に偏りすぎるとどちらの方法もその意味を失うのだと指摘しています。優れた戦略策定には「論理的思考」「統制と柔軟な思考」「組織学習」がうまく調和することだと論じています。
様々な要素を繋ぎ合せていく非線形的な思考を行なうのは人間の頭脳であり、最も有効に組み合わせた思考形態こそどんな困難な局面にも対応できるのだと、大前研一氏も述べています。

人間の欲求は様々なステージで現れます。例えばフェイスブックに代表されるSNSには大勢の人達が参加しています。
第3の場所であるスターバックスにはゆったりとした時間に浸る人が集います。東日本大震災では多くのボランティアの人たちが被災地に合流しました。このような動きはマーケティングリサーチからは出てきません。
過去のデータを用いた分析だけでは夢や希望や憧れといった目に見えない心の持ち様は理解できないのです。ダニエル・ピンク氏が指摘しているような感性も重要だと思います。

人に男性と女性がいるように、脳も右脳と左脳の機能や特徴が異なります。2元論に収斂させるつもりは有りませんが、分析やエビデンスといった過去のデータを活かした論理性と夢や希望や憧れといった目に見えない心の持ち様に対してストーリーや遊び心を共有できる想像性の両方のバランスが大切なのだと思います。20世紀後半は少し前者にバイアスがかかりすぎていた気がします。21世紀の初頭の今、後者に目線を向けることがイノベーションに繋がるのではないかと考えています。
夢や希望や憧れといった目に見えない心の持ち様への向き合い方が新しいマーケティング志向の第一歩ではないでしょうか。
フィリップ・コトラー氏は、それをマーケティング3.0と表現しているのだと思います。

1986年に明石家さんま氏が歌った『しあわせって何だっけ何だっけポンと生まれたシャボン玉・・・』というCMがありました。前年の1985年にプラザ合意があり、円高が一気に加速し深刻な不況となりました。輸出産業が大打撃を受けて東京や大阪などの町工場が続々と倒産し始めた頃です。一方この頃から不動産投機が始まり、ジュリアナ東京に代表されるバブル景気(1986~1991)に突入していったとも言われています。ある意味、今はこの時代に状況が似ているのかもしれません。(バブル景気になるかどうかは分かりませんが)

幸せってなんだろう?究極的な問いです。アトムは知っていたのかもしれませんが、私は少なくとも現時点で何らかの答えを持ち合わせてはいません。しかし、それを考え、こういうことかもしれない、という仮説は立てられると思っています。
その仮説を立てるための手段として戦略思考、新しいマーケティング志向が重要だと考えています。そして、戦略は実行できるカタチにすることが求められていると思います。
脳があるから手足が動くのか、手足があるから脳は命令を出せるのか、といった命題にも通じます。脳としての戦略と手足としてのカタチ=コミュニケーションツールは表裏一体だと考えています。

オフィス・スマートは、人と人、人とモノ、人と地球、人と未来・・・が、様々なカタチで繋がり、幸せになること。
幸せの定義は様々ですが、それぞれの幸せの為に「Create link&Shape」をキーワードとし、論理性と想像性そして実行性を発揮していきます。

オフィス・スマート 代表  増谷博昭

経歴 大学で心理学、大学院で経営学(主にマーケティング)を学び、
現在、京都大学大学院経済学研究科博士課程後期在学中。
沿革 広告制作会社のディレクター等を経て2010年4月オフィス・スマート設立。
主な論文等 「BtoBブランド構築に関する研究」「グローバルニッチ企業の成長過程<ビジネス・ケース>」
資格等 経営管理学修士(MBA)、環境マネジメントシステム審査員補、全日本スキー連盟公認指導員
所属学会等

日本商業学会、日本流通学会、商品開発・管理学会、日本広報学会、

BOPビジネス支援センター会員(経産省)